2015年7月14日火曜日
空とぶ人々に思うこと
割とどうでもいいことだけれど、なんとなく書きたくなった。
毎年この時期になると、各大学の人力飛行機サークルや社会人チームが各地の滑走路や飛行場で試験飛行を実施する。いわゆる鳥人間コンテストの時期だ。番組の放映は秋ごろだが、コンテスト自体は7月第4週の土日(事前準備も含めれば金土日になる。金正日ではない。)に実施される。学生チームにとっては期末考査と時期がかぶっている。だからある学生は単位を琵琶湖にぶちまけ、あるものは卒業を琵琶湖に捧げる。
鳥人間達の日常は過酷だ。機体製作と学業を両立し、更に制作費を捻出するためにあの手この手を尽くす。鳥コンが近づけば不眠不休の日が続き、徹夜で製作をした後でそのまま講義に向かうこともある。私が見た光景が鳥人間の全てではないだろう。しかしある程度は一般的なようだ。巷で言われる「遊んでばかりいる勉強しない大学生」とは真逆の位置いるのが鳥人間の学生たちだ。
だが彼らが得られる対価は決して大きいとはいえない。あれだけの手間をかけても、鳥人間コンテストの番組で大々的に取り上げられるのはほんの数チーム。後はダイジェストで数秒間の映像が流れるだけだ。大学からの評価も小さい。世間からは「ドボン(飛ばずにそのまま墜ちること)した方が面白い」と笑われ、自分たちが技術を集めて作った機体も「みんなおなじに見える」と言われる。
人力飛行機の飛行試験は風のない夜明け頃に始まる。彼らは夜中に集合し、試験飛行の実施場所へ向かう。組み立てと飛行前の調整を素早く終えても、飛ばせる天候になるまでに数時間かかる。必然的に彼らの体内時計は昼夜が逆転する。だが講義もバイトも待ってはくれない。
なぜ鳥人間であり続けるのか、自分の同期を見て疑問に思うことがあった。優勝候補でもない学生チームでも、彼らはボロボロになりながら機体を作り続ける。夜通しで翼にフィルムを張り、発泡スチロールの塊からフェアリングを削る。本番での記録は数百メートル。優勝チームの20キロという記録とは比較もできない。あれだけの時間と労力を費やしても、鳥人間はせいぜい就活での面接の話題にしかならない。むしろ単位を落として留年し、就活で不利になる学生もいるだろう。
なぜ辞めないのかと彼らに聞けば、達成感とか、やりがいとか、いろいろなことを上げるだろう。鳥人間をよく知らない人々は「好きでやっているんだから」と軽々しく言う。優勝候補になるようなチームならそれもあるだろうが、一方で義務感やOB、顧問からの圧力でやっているようなチームもある。ふとリブを切りながら「自分は何のためにここにいるのか」と自問自答するようなチームも、サークル活動と言いながら実質無賃で労働しているような鳥人間もいる。「心から楽しい」ので鳥人間を続けている学生はどれくらいいるのだろうという問いが、この時期になると頭をよぎるのだった。
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